当院での顔面神経麻痺の治療
ベル麻痺やラムゼイハント症候群による麻痺の治療が中心です。
鍼灸治療は損傷部位や顔面の筋肉の血行をよくして回復を早める効果があります。
①毎回の治療の前に柳原40点の評価を致します。
②施術致します。(低周波治療器は現在はほぼ使っておりません。)
顔がメインですが、手足等にも少々施術させて頂いております。
③治療後にお顔の動きをスマホにて動画を撮影させて頂きます。
(初回は治療前に撮影致します。)
※可視化してわずかな変化も大切に診ながら治療しています。
※ラインご利用であればデータの共有も致します。
メールでよく頂く質問を書かせて頂きます。
1、どれぐらいで治りますか?
個人差があるので、一概にはいえません。
しかしながら当院での治療成績では、来院前よりよくなったと感じて頂ける方はほとんどです。3人に2人(70%)は治療後から次回来院までに何らかの改善を感じて頂けています。
残り1人(30%)の方は重度で治る速度が遅く麻痺がある程度残る場合があります。
しかしながら現状よりほとんどの方は改善されます。
2、鍼灸治療での治療期間は?
軽度の方は1週間に2回~3回ぐらいで早い方で1ヶ月ぐらい、中度、重症の方で3ヶ月~半年ぐらいの治療期間が掛かっています。ある程度、日数が掛かり、忍耐がいる治療です。
鍼灸治療を受ける前と受け始めてからの変化は違うといわれる方が多いです。
顔の表情筋が動き出すと改善のスピードが上がります。動き出すまでが忍耐なのです。
ただ、1年以上経ってからやっと鍼灸院の門を叩かれる方もおられ、その場合も、個人差はあると思いますが、効果はあります。仕事の関係上1週間に1回しかこれない方が以外に多いのです。
ご結婚式前に発症し、毎日通われ約1ヶ月でほぼ100%改善した例もあります。(20代女性)
以前は毎日の治療もしておりましたが、現在は毎日は行なっていません。
3、聴神経腫瘍の手術や外傷によって起こる顔面神経麻痺は効果が薄いです。
また、中枢性の麻痺〔顔は片側麻痺があるが、おでこの皺は両方とも同じように動く〕は施術しておりません。(脳梗塞等の重篤な場合がありますので、まずはすぐに病院へ)その後、『それでも可能性に掛けたい』ということであれば数回の治療をさせて頂き、良い変化がみられた場合は継続して頂ければと思います。
発症原因
ベル麻痺
長く原因不明と言われていましたが、口唇ヘルペスを起こす単純ヘルペスⅠ型ウイルス(HSV-Ⅰ)の再活性化が原因と分ってきました。(※ウイルスの再活性化とは過労やストレスで一時的な免疫力の低下を機に再び動き始めることを良います。)発生は顔面神経麻痺の半分強を占め、人口10万人当たり20人から30人と言われています。
ラムゼイハント症候群
水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)が再活性化して起こると言われています。
耳に帯状疱疹ができその前後に症状が現れます。(疱疹ができないタイプも存在します。)
また、内耳神経が同時に犯されることがあるために「めまい」や「難聴」などの症状を伴うことも多いです。
発症後、早めの治療開始が大切です。鏡を見て『あれ』と思ったらまずは病院へ。患者さんのほとんどは病院でウイルスへの治療受けています。発症後、早い時間で頭蓋骨の中の細い通路のなかで炎症と浮腫が顔面神経に起こり、狭い空間で膨れればそれだけで神経が締めつけられてダメージを受けます。炎症は徐々に進行し1週間から2週間続くといわれています。早く止めなければその間に症状が進行します。気が付いたらの出来るだけその日の内に耳鼻科を受診ください。抗ウイルス薬とステロイド(抗炎症薬)による治療が1週間から2週間続きます。症状の重い方は薬の量が多く投与されるので入院の治療となります。(発症数が多いとはいえませんので顔面神経麻痺を専門にされている病院か、入院の場合に備えて大き目の病院が良いと思います。)鍼灸治療はその間併用される方もいますが、基本的にはその後でよいと思います。
リハビリについて
当院でも指導していますが、顔の運動は、力は軽く、決して力ますに、(筋肉を疲労させない)
自然の軽い力で筋肉が反応するように、とご指導しています。
また、動きにくい筋肉へのストレッチ的マッサージなども病的共同運動予防に効果的といわれています。
運動というと動かすことばかりを意識しますが動かすと筋肉は疲労します。
動かない筋肉を動かそうとするとなおこと神経は疲労します。
やさしくほぐしてあげることがリハビリの中心でも良いように思います。
病的共同運動
口を動かす時に目尻が引っ張られる等の症状。原因として、断裂した神経が他の神経とつながり《迷入再生》がおこります。
会話や食事、瞬きなど日常よく動かすところに発症しやすいといわれています。
早い人で4ヶ月ぐらいから出現する人もいます。起こらないように治療していく必要があり、起こるとなかなか治りにくいです。
神経の損傷の段階を3つに分けることが出来ます。
1、脱髄
神経の表面を覆っている髄鞘の損傷のみで神経本体は傷ついていない。
(1ヶ月ぐらいで治る可能性あり。病的共同運動は出現しない。)
2、軸索断裂
神経の軸索(本体)が傷ついているが神経内膜は損傷していな場合。
(3ヶ月から4ヶ月で治癒の可能性あり。病的共同運動は出現しない。)
3、神経断裂
神経内膜と軸索、髄鞘、共に損傷している場合。完全回復は難しいと言われています。
しかしながら現状より良くなる可能性は充分にあります。
そして病的共同運動が発症しないように予防していくことが大切です。
利用している道具
鍼:0.16mm(1番鍼)~0.18mm(2番鍼)一回使い捨ての鍼。細めの鍼を使っていますが、必要に応じてちょっと太めも。
てい鍼:先が丸くなっていて刺さらない鍼。小児鍼等で使っている鍼なのですが、個人差もあるかと思いますが、刺さなくても効く方はいます。
知熱灸:もぐさを三角すいを作って、熱くなったら言って頂いて取除くお灸。
低周波治療器(パルス):低周波治療器は効果ありのデータもあり利用していましたが、筋肉を疲労させてしまい病的共同運動が出現しやすくなるとのデータもあり、現在はなるべく使わずにいく方向です。
温圧療器:皮膚に押し当てて温める温灸器
shouki09:火傷しない温灸器
これらを使って治療しています。
東洋医学的治療の一例
・顔面神経麻痺の治療【黄帝内経 霊枢 経筋篇による治療】
《馬油とシナモン酒について》
顔面神経麻痺の症状は2つタイプにわけられる
1、冷えによるもの
・拘急するタイプ(強張る):馬油を患部に塗りこむ。
・暖めてなでる(マッサージ)。
2、熱によるもの。
・弛緩タイプ:桂枝(シナモン)を白酒(酒)に浸したものを関部にぬる。
・桑の木で鉤にしたものを口に引っ掛ける(指で代用)
3、その他の治療
酒・肉で体力をつけさせるとよい。
鍼は燔針《※1》を用いて速刺速抜がよい。痛むところに取穴。
この種の病を季春痺という。
(考察)
確かに患者さんの症状には2パターンの麻痺があります。
(弛緩している症状は重度であると考えています。)
家で出来る日常の方法
馬油マッサージはお勧めではないかと思います。
美顔用ローラーによるやさしい刺激。(100円均一のものでも十分かと)
桂枝酒は作り方はシナモンの粉末(調理用)やシナモンオイル(アロマオイル)等が考えられるのですが、アロマの知識不足もあり製作していません。
酒や肉を食べる:栄養をつけ神経の再生を助けること。胃腸の弱い人は胃腸を丈夫にすることも治療ポイントになります。
《※1》燔鍼:火にあぶって熱くした鍼。・・お顔には抵抗があり、当院では現在のところしておりません。
顔面神経麻痺の治療(耳について)
耳は全身を反映させているといわれています。耳たぶを頭、耳の上際をおしりと考えます。
丁度、赤ちゃんが逆さに丸まっている状態を想像してください。
耳たぶには顔の反射区があると言われています。
日常生活の中では優しく耳たぶを揉んでみてください。きっと良い効果があると思います。
(参考文献)
- 『経筋学』 P331 東洋学術出版 西田皓一
現代語訳 黄帝内経霊枢 P287 東洋学術出版 - 『顔面神経麻痺が起きたらすぐに読む本』
栢森良二 (著), 白井暁 (編集), 鈴木真由美 (イラスト)
出版社: 株式会社A・M・S 2011年発行
- 『顔面神経麻痺のリハビリテーション―動画DVD付 』
栢森 良二 (著) 出版社: 医歯薬出版 発行:2010/4 - 『顔面神経麻痺 診療の手引き-Bell麻痺とHunt症候群-2011年版』
日本顔面神経研究会(編)
出版社:金原出版株式会社 発行2011/3